監督 今井正
公開・1959 人の肌の色でその人の人格が分かるなんていうことはない。主人公のキクとイサムの父はアメリカ兵。母は日本人だが、病気で亡くなり、年老いた祖母と三人で暮らしていた。母が亡くなってしまった今、父が誰なのかもわからない。肌の色は成長するにつれて黒くなり、日本で生まれ育っているのに、周りから見れば外国人。学校では「くろんぼ!」とからかわれるイサム。しかし、まだ幼い二人は何故周りがそんな事を言うのかもわからない。将来を案じる祖母と孫であるキクとイサム。血のつながりの大切さ。どんなことがあっても孫を守る祖母。家族愛が溢れているだけに、外部からの好奇な目が痛い。同じ人であるのに、日本人だから良い。混血児は駄目。というようなあからさまな差別が沢山散りばめられている。しかしこんなひどい事が起きているのに、見ている側がずしんと暗くならないのは、キクとイサムの明るさだろう。彼らは同級生のいじめにも全力で立ち向かい、逆に負かしてしまうほどのわんぱくさ。唯一の家族である祖母は、何が起きてもずっと二人の見方。しかし、あと二、三年もすれば自分は死に、残された孫はどうなるのか…。二人の将来を考えれば、父の故郷であるアメリカへ養子として貰われたほうが幸せなのではないのか。今の暮らしは貧乏で、大学だって行かせてあげられない。ならば裕福な家庭で育つほうがいい。アメリカで自由に暮らしたほうがいい…と。しかし、アメリカにも黒人差別はあり、そこで暮らしたとしても、差別から抜け出すことはできないのではないのか…。答えはないのか。何が幸せなのか。それはやはり、愛情。暮らしが豊かになるのと、愛情は別。イサムはアメリカへ旅立ちますが、電車のなかで、行きたくない!と最後の最後で反発。見送る祖母は「嫌になったらいつでも帰ってきておいで」と泣きながら言う。何故一緒に暮らせないのか。世の中の理不尽さに思わず、何故?と何回も問いただしてしまう場面がいくつか。残されたキクには相変わらず同級生のからかいが付きまとい、何か問題を起こしてしまうと、混血だから…と全て決めつけられる。ちょっとした不始末が肌の色だけで大問題だと騒がれる。あまりの理不尽さに怒りを隠さず感情をぶちまけるキク。普通の女の子なのに…将来なりたいものは、「おかあさん」という純粋な子供なのに、混血に結婚は無理。尼になるしかないと決めつけられ…。最後、キクが自殺未遂をおこしたシーン、祖母との会話で涙がでました。「ずっとばあちゃんの傍におれ…」そのときキクに初潮が。赤飯を食べて、祖母の畑を一生かけて耕すことを将来の目的にして物語は終わります。立派なお母さんになれる暗示なのではないでしょうか。決して暗い最後ではありません。色んな人の立場からキクやイサムに対しての心情が伝わってきます。終始一貫して祖母の態度は変わらず、愛情が注がれていました。気になるのはイサムで、引き取られたその後が全く本編にないということ。二人の姉弟は今後再会することはあるのだろうか…。人種差別が日常生活にあるとこんなに愚かなのかと思わせます。人種だけに言えることではない気もしますが。時代が戦後まもないから余計に風当たりが強かったのでしょうか。全く悪い事をしていない無知な子供にとる態度なのかと。今現在はだいぶ緩和してきたと思うのですが、完全に差別が無くなることはないのかもしれません…。確かに、古びた日本家屋に黒人は似合わない。違うというのは明らか。けどそれは全く悪くない。純粋に日本で優しいお婆ちゃんに育てられてるんだからもう文化圏は日本だろ…と言いたくなります。日本語もあんなにぺらぺらで…ちょっと方言が強すぎて何を言っているのか分からなかったけど(字幕をつけてほしい。特にお婆ちゃんは何を言っているのか分からない箇所がちらほら)完全にただの元気な子供なので…。がんばるしかないのか。物珍しい好奇な目って数が増えるほど残酷です。考えさせられる作品でした。
[4回]
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