監督 マイケル・チミノ
公開・1979長い映画でした…。ひとつひとつの描写が、何一つカットされずに、そのままドキュメントみたいに流れているような、そんな感覚でした。日常の平和で楽しいシーンから、ベトナム戦争編に変わるのですが、そのギャップが半端ないです。アメリカ軍として入隊した若者、マイケル、ニック、スティーヴンの三人。彼らは国のために命を…という意気込みではない感じで、入隊するのが当たり前のような(実際にベトナムに行く前は鹿狩りをしたり、ごく普通の青年)…広いアメリカですから、ロシア系移民らしいし、彼らの背景が結婚式のシーンから読みとれるらしいのですが、知識がないので深く読みとれませんでした(泣)この結婚式のシーンは恐ろしく長く感じました…実際の結婚式をカットせず全て見たって感じです。スティーヴンとアンジェラの結婚。杯の飲み物をこぼさずに飲み干したら幸せになれる…で、一滴だけこぼれたのが印象的でした。白いドレスに赤黒い水滴がぽつり。その予言どおり、スティーヴンは無事生きて帰れるのですが、両足を失って車イス生活に。病院の施設で生活してましたが、アンジェラの元へは帰れない状態で。身体を治すのが先ですが、心のほうの回復をはやくしてほしいです。唯一平和な部分で、結婚式後のマイケルの暴走ぶりが何ともアホな若者らしくて好きです。全裸で走るとか。こういうバカ騒ぎを楽しくやってる彼らの生活が戦争で一変してしまうのがリアルですよね…。全裸で走りまくったマイケルが「ベトナムから帰れるか心配だ、すべてはこの町にある…」と隣にいたニックに言うのですが、そのニックが
「何かあったらここに連れて帰ってくれ」とマイケルに言うんですね…。この言葉、ラストシーンを見るとかなり泣けます…。マイケルとニックの友情が、本物すぎて(泣)。ベトナム側の捕虜になったシーン、ロシアンルーレットの餌食にされたとこは本当に非道…。こんな命のやりとりを楽しそうに見ることができてしまう精神状態にさせる、戦争という狂気が恐ろしい。人間じゃなくなってしまう感じで。マイケルの機転で助かったものの…このままニックもマイケルのように故郷に帰ったら良かったのにと。ロシアンルーレットのプレーヤーになるなんてな…。金が稼げるからとかそういうんじゃなく、ニックは精神が崩壊してしまったんだろう…。普通の判断ができない状態。戦争が終わって故郷に帰ってきたマイケルだけど、ニックの姿はない。マイケルはニックを探そうと連れ戻そうと、自ら危険な場所に飛び込んでいくんですね…。プレーヤーとして勝ち続けているニックがもう仏か何かの境地にいるようで、人が放つオーラじゃないのが怖い。そこでマイケルがニックを取り返すためにロシアンルーレットに参加…。向かいあって、少しでも心が、マイケルだと分かって正気になればと思ったのだろうが、ニックの神経はおぼろげで、簡単に銃の引き金をひく。迷いもなく。
「愛してる…」そう言って引き金をひいたマイケルは本当に自分が死ぬつもりだったと思う。死んでも取り戻したい思いが真っすぐな愛が伝わってきて号泣です。でもそれは空で…。ニックが当たりなんですよね。もしもマイケルがここに来なかったら、きっとニックは勝ち続けていただろうと。しかしここで終わりにしなければ、ニックという精神は心は既に死んでいて、もういないのだから。辛いことをずっと続けるよりはここで終わらす…。「何かあったら連れて帰って」正気の頃に言ったニックの台詞が響きます。死んでやっと故郷に帰れて…。マイケルもその他の友人も、悲しくてやるせなくて。戦争という愚かな行為がどのように人を変えてしまうのか。普通に楽しく生活することがどんなに幸せか。戦争、反対です…というメッセージが映画を通して伝わってきました…。見るのが辛い映画だけれど、目をそらしてはいけない問題なんですよね。
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